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東京地方裁判所 昭和57年(行ク)1号 決定 1982年2月09日

申立人

畢華ことタック・ホワア

右代理人

笹原桂輔

外五名

相手方

東京入国管理局主任審査官

吉田茂

右指定代理人

榎本恒男

外四名

(東京地裁昭五七(行ク)第一号、執行停止申立事件、昭57.2.9民事第二部決定、一部認容)

主文

相手方が昭和五六年一〇月一三日付で申立人に対して発付した退去強制令書に基づく執行は、送還部分に限り本案事件(当庁昭和五七年(行ウ)第三号事件)の第一審判決言渡しの日から一箇月を経過する日までこれを停止する。

本件申立てのその余の部分を却下する。

申立費用は相手方の負担とする。

理由

一本件申立ての趣旨は、相手方が昭和五六年一〇月一三日付で申立人に対して発付した退去強制令書に基づく執行は送還部分に限り本案判決が確定するまでこれを停止する、申立費用は相手方の負担とする、との裁判を求める、というにある。

判旨二よつて検討するに、本件退去強制令書に基づき申立人の国外への送還が執行されると、申立人は事実上本案訴訟を維持することが著しく困難になるのみならず、たとい右訴訟で勝訴の確定判決を得ても、再入国その他送還執行前に申立人が置かれていた原状を回復しうる制度的保証が確立していない現状においては、申立人は右執行により回復困難な損害を被ることは明らかであり、右損害を避ける緊急の必要があるというべきである。

三相手方は、本件申立は「本案について理由がないとみえるとき」に当たると主張する。しかしながら、法務大臣が在留特別許可を与えることなく申立人の異議申出は理由がない旨裁決したのは著しく裁量権を逸脱していて違法であり、ひいて本件退去強制令書発付処分も違法であるとの本案訴訟における申立人の主張は、主張自体失当とはいえないし、本件全疎明をもつてしても、いまだ現段階で直ちに右主張は理由がないとみえると判断することはできないから、結局、今後の本案の審理をまつ外はない。従つて相手方の右主張は失当である。

四よつて、本件執行停止の申立ては理由があるというべきであるが、当裁判所は、本案の第一審判決言渡し後、その時点の資料に基づき執行停止の各要件、特に本案について理由がないとみえるときに当たるか否かにつき判断するのを相当と考えるから、本案の第一審判決言渡しの日から一箇月を経過する日まで送還部分の執行を停止することとし、本件申立てのその余の部分は理由がないからこれを却下することとし、申立費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九二条を適用して、主文のとおり決定する。

(時岡泰 満田明彦 揖斐潔)

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